春とぴょんこ

もうすぐ春。
子供時代田舎で過ごしたので、「春」と頭で想像するだけで、田んぼ一面に咲く春のレンゲの匂いは今でも鼻先に在る。
レンゲの中で遊び回っていて、スニーカーで踏み抜いてしまった茶色ヘビの感触も、右足に在る。
 
田んぼ横のかなり幅広い用水路を、なぜかトビウオになったつもりで飛び越えてみたら
流石トビウオ涼子、向こう岸(大袈裟)に辿り着く事無く用水路に華麗なダイブ。飛び魚だもの。仕方ないじゃない。
身体中に受けた衝撃は今でも鮮やかに心の中に在る。
キャベツ畑の緑のお城を、移り気に行き来する白いモンシロチョウの羽も目をつぶれば目の裏に在る。
遊びに夢中になるあまり、散歩がてらシロツメクサ満開クローバーの茂みに放置していた飼いウサギの「ぴょんこ」は気付いたら居なくなっていた。
泣きながら近くの用水路の中まで潜って探した、
夜が降りて景色が見えなくなるまで。
今日何故かぴょんこを思い出して
どうかあの時、野犬に襲われたのではなく
優しい人に見つけてもらっていますように。と過去に向かってお祈りした。
贖罪は苦い心持ち。
春の野菜のえぐみのように。
そうして大人になるのかな。

Ryouko Aomasa/蒼政涼子 Piano Home page

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