骨折日記3〜ヒギー誕生〜

左足の甲が折れると、左足全体が痛い。
地面にそっと付けることすら、出来ない。
ストレートな表現だが、飛び上がる程痛いのだ。

そして実際自分が折れてみて初めて分かった事。
それは
「左足の甲が折れると、そこを庇う動きをする事により、他の身体の部位も、滅茶苦茶痛くなる」
という辛い事実。

松葉杖。まずこれの扱いが至難の技。
普段当たり前のように左足にかけている体重を逃がすために使うわけだが…
腕、手首、肩、ことごとく、痛い。
慣れてない内は脇にも体重をかけてしまっており、滅茶苦茶痛かった。
また、電車の上りエスカレーターで松葉杖の一本を取り落としてしまい、丁度駅員さんが近くに居て事無きを得たが、これは危なかった。他人様に迷惑をかける事にもなり得る。

そして、右足。
家の中の移動はケンケン走法で頑張ったが、右足首が死ぬほど痛い。ケンケンなんて、そう長い時間出来るものではないのだ。
家の中のトイレが死ぬほど遠く感じる。隣町へ出向く位遠く感じる。
しかもケンケンの振動は左足に伝わり、これがまたぞっとする程に痛いのだ。

人間の身体のバランスって上手く出来てるもんだなあ…と身に染みて感じた。

骨折宣告当日は、最寄りのバス停から我が家(普通に歩けば徒歩2分)まで、15分位かかった。変な汗ダラダラ、途中休憩数え切れず。

翌日は、ひたすら左足を下に降ろさぬような姿勢を保ち、安静に。降ろすと血が下がって浮腫んで来てしまうらしい。
身体のあちこちが痛過ぎて、動き回る気力も無し。

その翌日も、痛みの度合いは変わらず。
「うう!全て自己責任…しかもアホな事故である…しかし、しかしながら、こんなに痛いと、正直心が折れそうだ」
自分の左足なのに、自分の意思の行き届かない、地球外生物の様に思えて来る。
「こいつのせいで、他の身体の部位も痛い。なんという事だ…」

情け無い。自分のアホさへの諦め、恨み、悲しみ…ダメだ、この思考回路は良くない。どうしたら良いのだ。

「…共存だ」

この、左足君と、共存するしか無い。
共存一択。
折れたもんは仕方ない。恨んでいても、悲しんでいても、結局すぐには治らないのだから。
共存。か。

「寄生獣」という漫画を思い出した。
ある少年の右手に、変な生き物が住み着く、私の世代の大ヒット漫画。その生き物の名前は「ミギー」。

うむ。良いかね左足君。今日から、お前の名前は、
「ヒギー」だ。
ヒギー。共に生きよう。
お前を無理に排除するつもりは無い。労ってやるから。だから少しでも早く治っておくれ。
分かったな、ヒギー?
『オウ』
ヒギーのお返事が聞こえた。
思春期の男子っぽいキャラである。

よし。和平協定は結ばれた。
ところでヒギー。突然なのだが、炭酸水が飲みたくないかい?お家に無いからコンビニ行かなきゃなんだけど。お前、頑張れる?
『…』
ヒギー。無視はいけないぞ。イケるのかヒギー?
『…タブン。』

OKヒギー。信じてるぞ。

お財布の入ったカバンをタスキ掛けにし、松葉杖を両手にしっかり抱え、
私とヒギーは、セブンイレブン目指して出発した。

つづく










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