骨折日記1〜折れてます宣告〜

2018.8月中旬、某日。
私は浮かれていた。

私の母親。父親と二人で愛媛暮らしなのだが、5月末から東京の病院へ入院し、手術。その後リハビリと、東京で長い期間頑張って来た。

そんな母親に、担当医から目出度く外出許可が出た。
父親が愛媛から出て来る日に合わせて外出をし、私も含め、病院近くのレストランでランチをしようという計画になっていた。

自宅でイソイソ準備する私。
いやー母さん良かったなあ。
ランチランチ♪

「びょーん」
と声を出してリビングで跳ねた。
どの位の勢いで跳ねたかというと、
身体能力抜群、視力5.0、アフリカ少数民族の人ばりに、跳ねた。遠くの獲物を確認する勢いで跳ねた。

着地点に、ガラスの化粧瓶が転がっており、我が左足の甲が瓶の上に着地。
左足首が、瞬間的に変な方向へ曲がった感覚があり、
私はアフリカの草原…ではなく、リビングの床に倒れ伏した。
草原(リビング)をコロコロと転がるガラスの化粧瓶が目の端に写る。

あまりの衝撃波に声も出ない。
我が心の声→「しまった。これは、やってしまったかも…しれん」

2.3分後、そっと左足に触れてみる。
「あ、これ大丈夫そうだな。助かった」

多少痺れてはいるものの、恐る恐る歩いてみると、普通に歩ける。
「良かった。普通折れてたら歩けないだろうし、捻挫してても痛くて動けないだろうし」

兎に角、私はやはり運動音痴、田植え上等、胴長日本人。最近のチャームポイントは四角くなって来た尻。視力0.4乱視。そして、獲物は、取り逃がした。(意味不明)
無闇矢鱈に、跳ねては、いけないのだ。

少し反省し、そのまま母親の病院へ向かった。

皆で外で食べるランチは美味しく、足は少しズキズキするものの、気に留めず、何度目かの、サラダバーのお代わりを取りに行こうとすると
「あれ…」
急に、左足が一歩も踏み出せなくなった。
その場のトリモチに捕まったかのように、本当に左足が、前に出せないのである。
無理矢理左足を踏み出して地面に着地させてみると。
「…………!!!!」
激痛。世の中にこんな激痛が、あったのだなと思うレベルの激痛。
しげしげ観察してみると、履いた靴の中で、左足全体が、むっくむくに膨れて来ている。
靴を脱ごうとするも、むくむく過ぎて、脱げない。

両親に心配をかけるのは、避けたい。
私は笑いながら言った。
「さっき話した件の、左足が、動かなくなった!捻挫かも」
母親が言った。
「その感じだと、違うかも知れないわ。丁度良かった。母さんの病院の外来で診てもらいしょ」


母親の松葉杖を強奪し(母さん、こんな娘を許して下さい)母親の入院している病院へ。
整形外科の外来へ向かうも、先生方皆様、手術中。
その頃には、私の身体中から、変な汗が流れ出していた。何だろう、痛みに対する人間の身体の反応って不気味…。

歯をくいしばって、大量の変な汗と共に他の病院へ。何だろう。痛みで倒れそうな、血の気の引くような、この感覚は。

待合室で自分の名前を呼ばれ、
右足ケンケン走法で、ドスドスと診察室へ向かう。
病院の床を、血眼汗だく、化粧も剥がれ落ちた中年女が髪を振り乱しケンケンで進んで行く姿を想像してみて頂きたい。それは地獄絵図そのもの。

ドスドス音に気づいたお医者さんが、診察室から出て来る始末。
「ああ、いけませんね。外のソファーで診ましょうか?」

あれ…何だか素敵な声のお医者さん。
お医者の先生に目をやると。
イケメン。
知的なイケメン。そう、ゴレンジャーの中の、青レンジャー的イケメン。
「あ、すみません、大丈夫です、イケます」
私は、スカして、最高にスマートなケンケンをキメて診察室になだれ込んだ。

「大丈夫ですか?どうされましたか?」青レンジャー先生の優しいお言葉。

「いえ、家の中で、不注意で左足を捻ってしまいまして」
スカして答える私。リビングをアフリカの草原に見立てて跳ね、化粧瓶でぐねった、なんていう事実、青レンジャー先生には、話せないもの。

「靴脱げますか?」
「ああ、はい、大丈夫です」
ダラダラ脱ぐと絶対痛い。スカして瞬間芸的に靴を脱ぐ。激痛。しかし悲鳴を喉の奥で止める。

「うわあ…」
「あー…」
青レンジャー先生、私共々、しばし沈黙。

「これは…一応レントゲン取りますが、まあ、骨折の可能性高いですね。ギブス的なものを作ります」
「……」
レントゲン後、
我が左足の甲には、2箇所ヒビが入っている事が判明。

「先生、ヒビって事は折れてないんですよね?何でこんなに痛いんでしょうか」
「ヒビも骨折の種類の一つなんです。あと、症状的に、これはかなり大きい怪我ですね。下駄履き骨折、て言ってね。下駄や草履の鼻緒が切れたときに、今回のような場所は、よく折れちゃうんですよね」

添え木&包帯でクルクル巻きにされた我が左足。
レンタル松葉杖。
イケメン部隊の青レンジャー先生に優しくして貰い、良い気になった私。
安心感から、少し楽観的な気持ちになっていた。

しかしこの後。長きに渡り、
骨折れ涼子には、数々の試練が襲いかかって来るのである。

つづく

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